<過去メール>
放射能探知機


2014.4.14


謹啓

  上記の問いに対する回答ですが、「雨が降るとBGは上がります。」が正解です。

  BGは放射能探知機の場合には、探知機の周囲の空気中に含まれるガンマ線の数(/秒)の事=CPSを意味します。空間線量と云う言葉は、ある一定の高さ(例えば、地面から1m上とか)で計測する放射線量(単位:マイクロシーベルト)を指す時に使用します。日本では、この二つの意味が混乱して使用されているのが現状です。

  下記の左側は、探知機が設置されている場所の探知機ボックスの周りのBGを示します。アラームが鳴る閾値(しきいち)は、通常、BG x1,2~1,4倍のCPSとなります。この閾値は、弊社の旧型の場合には、30秒毎にCPSを計測し、29秒前のCPSを足して、その数値を2で割るという計算で求めていました。現在は、BGの変動はディスプレイを見て戴いたらすぐにお分かりになるのですが、数値もグラブ上の各電位の棒グラフも激しく上下しています。つまり、BGは非常に変動が激しいのです。それ故、新タイプでは、2秒ごとにシグマ(標準偏差値)を取り、3シグマ、4シグマと云う形で閾値を決めています。この方法により決められた閾値の方が、現状をより反映している事は言うまでもありません。

  尚、BGは、探知機の設置された場所により異なります。つまり、科学的には、余り良い基準値とはなり得ないのです。人体に影響を与える基準値としては、外部被爆量の単位である放射線量(マイクロシーベルト:μSv/h)の方が信頼性が高いことは言うまでもありません。

  しかし、トラックやトレーラーから放射される放射線量を計測するには最低30秒は掛かってしまいます。それ故に、探知機の反応速度を早くできるCPSの変化を捕えるプラスチック系の発光体を使用した放射能探知機が登場した訳です。これは、これであながち間違いと云う訳でもありません。但し、線香花火の様に人体に影響を与えないトリウム232の様に弱い放射線も1個、マシンガンの様なエネルギーを持つセシウム137も1個、そしてコバルト60の様な大砲の様なエネルギーを持つ放射線も、エネルギーの強弱に関係なく放射線の数しか探知できないと云う大きな欠点があります。プラスチック系発光体を使用した探知機の場合には、セシウム137換算の場合には・・・と云う説明を付けてマイクロシーベルト表示がディスプレーに表示される様になっていますが、線香花火の様に弱いエネルギーしか持たない放射線をセシウム137換算したら、とんでもなく大きな放射線量の値となり、現場の方だけでなく、事務所の方々も非難しなくてはならない程の大騒ぎとなります。反対に、非常に放射エネルギーの強いコバルト60の場合には、実際の放射線量よりも弱い数値が出ることになります。

  それでも、他社製の探知機を使われているユーザーの方々は、「ウチのも、マイクロシーベルトは表示されてるよ。」と言われていますから、これはお客様を錯誤に陥れた詐欺と呼ぶよりも、販売する方に故意・悪意(間違いである事を”知っていた”)がありますので不法行為に該当する売り方だと感じています。何故なら、放射線量を計測する為には、昨日のメールでもご説明致しました様に、非常に高度な計算方式と、各種の放射線源を使用した「エネルギー補償」と云う複雑な補正作業が必要になるからです。

  いずれにしろ、福島の原発以後に市場に参入して来た探知機メーカーや代理店は、困難だった時期を経験していませんので、信用に足るビジネスパートナーには成り得ないのにな・・・と感じています。CPSの変動によりアラームを鳴らすだけの装置なら、機械科や電子機器科を先行している高校生でも、秋葉原に行って、必要部品を見繕い、簡単に組み上げる事ができます。その程度の装置です。原価は人件費を除けば、200万円も掛からないでしょう。それ故に、台貫屋さんへ支払う口銭も生まれる訳です。

  書きながら、ちと、興奮してきました。閑話休題。

  さて、雨の火にBGは高くなるのか・・・と云った本日の本題に戻ります。

  地中からカリウム40、トリウム232(ラドン発生装置から放射される自然放射能)、ウラン235が常に噴き出ています。原子番号が200番台を超えますと重い原子となります。それ故に、大きな塊で空気中や大気を漂っている訳ではありません。原子に近いほど小さな放射性物質となり、塵にくっついた形で浮力を得て大気中を浮遊しています。雨や雪が水蒸気の塊である雲の中でできる時に、この放射性物質を取り込んだ塵が核になります。
  雨や雪の日には、下記のイラストの様に大気中を漂っている放射性物質を取り込んだ塵が雨や雪と共に地上に落ちてきます。弊社の観測によると、雨や雪の日は晴れた日よりも20%BGは高くなります。

  すると、納入先のアラームを鳴らすか鳴らさないかについては、経験則を基にすると下記の様な事が言える事になります。

1.自社のヤードが晴れで、納入する時に雨になった場合;
  ・納入先のアラームを鳴らさないか、鳴らす可能性はかなり低くなる。 ↓
2.自社をトレーラーが出る時に雨で、納入先に着いた時には晴れていた場合;
  ・納入先のアラームを鳴らす可能性はかなり高くなる。 ↑
3.自社も晴れ、納入先も晴れの場合;
  ・自社の探知機周りのBGと納入先のBGの差異により納入先のアラームを鳴らす確率は高くなる。↑

  上記3.項の様な事は何故言えるのでしょうか。それは、殆どのスクラップヤードのBGは、平均で25~30%広い面積をコンクリートで覆われた製鋼メーカーよりも高いからです。

  では、その差異を低くする方法はあるのでしょうか?

  この件につきましては、このメールも既にかなりのボリュームになりましたので、また、来週のメールでご案内申し上げたいと思います。

謹白
村田幸三